今回は、「不法駐車への法的対応」についてです。

先日、顧問先より、「会社の駐車場に車両が不法駐車されており、駐車した人物も不明ですが、撤去してしまってよいでしょうか。」との質問を受けました。

まず、同意なく車両を撤去等してしまうと、自力救済禁止の観点から違法となり、民事上の損害賠償請求等や刑事上の器物損壊罪のリスクがあります。
そのため、基本的には自ら撤去することはできない点に注意が必要です。

この点、車両の撤去義務を負うのは、基本的には車両の「所有者」であるため、まずは所有者を特定する必要があります。
普通車両の場合は、運輸局等より登録事項等証明書を取得することで、所有者を確認することが可能なケースが多いです。

なお、同証明書を取得した結果、所有者が信販会社や自動車販売会社になっている場合には、これらの会社に対して、撤去請求が可能な場合もあります(最判平成21年3月10日)。

上記の通り、基本的には所有者に対して撤去を求めることになりますが、全く応じない場合には、やむなく訴訟提起をする必要があります。
但し、勝訴したとしても、相手方が任意に撤去しない場合には、強制執行する必要があり、裁判所への予納金や撤去費用について高額な費用負担をせざるを得ないケースも多いです。

また、完全な第三者ではなく、駐車場の「契約者」が車両を駐車したまま、利用料金を支払わずに連絡も付かなくなるケースがあります。
この場合、撤去に向けた法的手続に加えて、料金不払いを理由として駐車場の利用契約について解除しておかなければ、法的には新しい借主と契約することが難しくなります。

しかし、車両を置きっぱなしにしている状況では、本人に連絡は付かず現住居も判明しないことも多く、その場合、解除の意思表示等について公示送達をする必要が出てきます。

上記の通り、不法駐車については、実際の撤去に至るまで段階的にステップを踏む必要があり、細かな法的判断が必要なケースが多いです。
以上の通りですが、少しでもご参考になりましたら幸いです。

不法駐車への法的対応
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