今回は、「敷引特約の有効性」についてです。
先日、不動産オーナーである顧問先より、「賃借人が負担すべき原状回復費用について、そもそも決められた一定額を敷金から差し引いていますが、問題ないでしょうか。」との質問を受けました。

一般的に敷引特約とは、賃貸借契約開始時において、賃借人から賃貸人に預けられている敷金(保証金)から、明渡し時に「一定の割合を」差し引くことを指します。
例えば、敷金100万円(敷引割合20%)の場合には、原則として、敷金返還時に20万円について、自動的に(理由の有無を問わず)差し引かれることになります。

この点、居住用の賃貸借においては、敷引特約の有効性について、消費者契約法との関係でも判断されることがあります。
具体的には、原則として、賃貸借契約において自然損耗は当然に予想されており、その対価も考慮して賃料額は設定されています。
そのため、賃料とは別に敷引特約をするのは、自然損耗に関する費用について二重取りをしているとして、敷引特約は無効と判断する下級審判例もありました。

上記に関して、平成23年に敷引特約についての最高裁判例がありますので、ご紹介します。
最判平成23年7月12日は、居住用建物の賃貸借契約において、賃借人が明確に敷引特約を認識していて契約していたのであれば、敷引額が高額に過ぎるといえない限り、原則として有効と判断しました。

同事案においては、敷引金の金額が、賃料の3.5倍程度にとどまっていること等が考慮されたようです。
但し、敷引割合については、賃料額との均衡のみならず、他の賃借人より支払われている諸費用(礼金、更新料、共益費等)等とのバランスについても注意する必要があるとも言われています。

以上の通り、敷引特約は原則として有効と考えられるものの、個別具体的な内容等によっては問題になりうるリスクがあることを念頭に対応されることをお勧めさせて頂きました。

敷引特約の有効性
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