今回は、「事業承継と株式共有」についてです。

中小企業を事業承継する際に、株式の共有概念において、非常に誤解を生みやすい点がありますので、以下骨子を解説させて頂きます。

例えば、父親が60%の株式を所有して、事業承継予定の長男が40%の株式を所有していたとします。
父が遺言なく死亡して、相続人が長男以外に、次男と三男の2名がいたとします。

その場合には、それぞれ子の3人が父の株式から20%ずつ株式を相続することになり、長男が60%(元から所有していた40%に加えて、3分の1の相続分20%をプラスしたもの)を所有することになり、次男と三男を合計しても40%にしかならないから問題ないと誤解されている方も多いです。

この点、株式は法定相続分に応じて、当然に分割されるわけではなく、遺産分割協議中は相続人間の共有状態になると考えられています(最判H26.2.25参照)。
今回のケースで言えば、遺産分割協議中においては、長男20%次男20%三男20%と分割されるのではなく、3人で60%分の亡父親の株式を共有している状態になります。

そして、「共有状態にある株式の行使方法をどうするか」という点ですが、原則として多数決で決定されることになります(会社法106条・最判H9.1.28参照)。
そのため、60%分の共有状態において、次男と三男が結託すれば(3分の1+3分の1で3分の2になる)、3分の1しかない長男に対しては過半数を握ることができるので、次男及び三男としては、結果として60%分の株式を行使できることと同じ結果になります。

そのため、長男が父親の生前から40%を所有し、相続によって法定相続分の3分の1である20%を取得予定と安易に考えていたとしても、会社経営を次男及び三男に支配されてしまうリスクが残ってしまいます。

以上のリスクを念頭に置いて、現在の会社の株式状況を確認の上、事業承継対策はできる限り早期に開始されることをお勧め致します。

事業承継と株式共有
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