先日、顧問先会社より「仮に従業員が就業規則に違反した場合に、減給処分に加えて、解雇等の処分も二重に行うことは可能でしょうか。」という質問がありました。

この点、幾つかの裁判例からすれば、「懲戒処分は、使用者が労働者のした企業秩序違反行為に対する一種の制裁罰であるから、一事不再理の法理は就業規則の懲戒条項にも該当する。過去にある懲戒処分の対象となった行為について重ねて懲戒することはできないし、過去の懲戒処分の対象となった行為について懲戒することはできない。」という一事不再理の原則を懲戒処分にも採用していると考えられます。

従いまして、解雇処分が有効か否かという問題は別としても、1つの行為に対して二重の処罰をすることは原則としては許されないと考えるべきでしょう。

しかし、ある裁判例において、「出勤停止処分」について、出勤停止命令書に処分は追って通知とされ、処分を決定するまでの出勤停止期間は内勤手当が支払われていたこと等を理由として、「同出勤停止は懲戒処分ではなく、単に業務命令に過ぎないため、二重処罰の禁止に当たらない。」と判示しているものもあります。

以上より、企業側としては、従業員の同一違反行為に対する二重懲戒処分は禁止されていると判断すべきことが大原則とは言えます。

但し、例えば出勤停止処分を行ったものの、単に非違行為を十分に精査した上で改めて処分を行うために必要な措置であった場合には二重処罰とならないケースもあり得ます。

従いまして、具体的ケースに応じて、禁止されている二重処罰に該当するか否かを十分に精査した上で、適正な手続に則った処分をするよう注意すべきと言えるでしょう。

二重懲戒処分の禁止
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