今回は、「表明保証責任の範囲等」についてです。
先日、顧問先より、「M&Aで取引した売主に対して、表明保証違反を理由として損害賠償請求したいのですが可能ですか。」との質問を受けました。
M&A取引においては、株式譲渡契約書等において、当事者のそれぞれが相手方に一定の事項を保証することが一般的です。
このような保証条項について「表明保証」と呼ばれますが、取引後に「話が違う」ということで、買主が売主に対して表明保証違反に基づく損害賠償請求を行うことがあります。
裁判で争われた場合には、表明保証違反の事実の有無、要件の解釈、免責事由、損害の範囲、消滅時効等が問題になることが多いです。
加えて、下記のように、①表明保証の範囲に限定を付した事例、②表明保証の適用にあたり買主の主観を考慮した事例がありますので、ご紹介いたします。
①としては、真実であることの保証の対象を、企業買収に応じるか否か、買収価格をどのように定めるかなどといった決定に影響を及ぼす情報について、重大な相違、誤りがないことを保証したものと限定解釈したものがあります(東京地裁平成19年7月26日)。
具体的には、差入保証金額の誤りや少額の売掛先の倒産の事実の不開示、一部店舗の新賃貸借契約の締結などはこれに該当しないとしたものです。
②においては、そもそも表明保証において「買主が表明保証違反を認識していたか否か」によって表明保証の効果は左右されない旨の条項が設けられるケースも多くあります。
しかし、一部の裁判例においては、表明保証違反の事実につき買主が知っていた場合、又は知らないことにつき重大な過失がある場合には、売主は表明保証責任を免れる余地があるとされています(東京地判平成18年1月17日)。
以上の通りですが、表明保証責任に基づく損害賠償請求については、様々な視点からの法的検討が必要となる点に注意が必要です。
少しでもご参考になりましたら幸いです。
最後に、民事法研究会が発行する「市民と法」(No.154 2025年8月号)における「最新法務事情14」の項において、「不動産競売と借地権譲渡」として寄稿させて頂きました。
司法書士向けの情報誌になりますが、ご興味のある方がいらっしゃいましたら、 お手にとって頂ければ幸甚です。
https://www.minjiho.com/book/b10144324.html
表明保証責任の範囲等