今回は、「固定残業代制」についてです。

先日、顧問先から、「残業代について、固定残業代制を導入しようと思っているのですが、注意点等はありますか。」との相談を受けました。

まず固定残業代制とは、労働基準法37条に定める計算方法による割増賃金を支払う代わりに、定額の残業代を支払う制度のことをいいます。
固定残業代制には、時間外・休日・深夜労働の割増賃金について、①基本給の中に含めて支払う方法と、②一定額の手当てを支払う方法がありますが、固定残業代として有効と認められるためには、以下の2つの要件が重要と言われています。

最判平成6年6月13日においては、
「歩合給の額が、時間外及び深夜の労働を行った場合においても増額されるものではなく、通常の労働時間の賃金にあたる部分と時間外及び深夜の割増賃金にあたる部分とを判別できないものであったことからして、この歩合給の支給によって、法37条の規定する時間外及び深夜の割増賃金が支払われたとすることは困難」
と判示されました。

上記最高裁判例を参考に、より具体的に説明しますと、固定残業代制の有効要件として、
①残業代の部分と所定内賃金との区別が明確にできること、
②形式上残業代の形で支払われているだけでは足りず、実質的にも時間外労働の対価としての性質が必要と考えられています。

固定残業代制を導入する場合には、単に形式的に制度を作るだけではなく、残業代と所定内賃金との区別を明確にした上で、実質的にも時間外労働の対価としての性質を持つ内容にしなければなりません。
実質を備えているか否かはケースバイケースになりますので、十分な精査が必要と言えるでしょう。

固定残業代制
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