今回は、「近親者の監督義務の範囲」についてです。

先日、顧問先の社内研修に講師として参加しました。
従業員の皆様に少しでも法律を身近に感じて頂くために、身近な事例を題材にしたいとのことでした。

そこで、JRと痴呆老人のケースと、小学生のサッカーボールが原因で死亡してしまった被害者のケースという最高裁の2つの事例を題材にさせて頂きました。

簡単な事案の骨子としては、小学生がサッカーを校庭でしていて、ゴールから外れたボールが校外の道路に出てしまいました。
たまたまバイクで通りかかった被害者がボールが原因で事故を起こして死亡してしまった事案です(最判H27.4.9)。

高裁では小学生の両親に監督義務ありとして、被害者からの損害賠償請求を認めましたが、最高裁では小学生のサッカー遊びは通常の使用の範囲内の行動であり、両親の監督義務違反とまでは言えないとして、損害賠償請求を認めませんでした。

またJRと痴呆老人のケースでは、地裁では老人の息子にも妻にも賠償責任を認めましたが、高裁では息子の責任は否定して妻のみに責任があるとされ、最高裁では妻も息子も責任を負わないとされました(最判H28.3.1)。
JRの線路に立ち入ってしまった痴呆老人の監督義務者として、要介護認定を受けていた妻や遠方に住んでいた息子まで責任を負わせることは妥当ではないという判断でした。

2つの事例のように、親や子という近親者の監督義務は誰にでも問題になり得ます。

今回は最終的には最高裁でどちらも責任は否定されましたが、監督義務の範囲は明確に規定されているわけではありません。
これまでよりも監督義務の範囲が限定的に解釈されるようになったとも評価できますが、各事例によって判断はケースバイケースとも言えます。

身近な問題としてぜひ皆様にも考えて頂きたい事例でしたので紹介させて頂きました。

近親者の監督義務の範囲
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