取締役は、自己または第三者のために会社の事業の部類に属する取引をしようとするとき、当該取引につき重要な事実を開示して、株主総会の承認を受けなければならないとされています(会社法356条1項1号)。

同条の趣旨は、取締役が会社の事業機密に通じていることを悪用し、会社の利益を犠牲にして自己の利益を図ることを防止するためと言われています。

この点、「会社の事業の部類に属する取引」とは、実際に行っている事業はもちろん、新規進出事業や進出準備を進めている営業区域における取引も含まれると考えられています。

また、取締役本人が過半数の株式を有していなかったとしても、事実上競業会社の経営を支配している場合には、競業避止義務違反に該当すると認定された裁判例もございます(大阪高等裁判所・平成2年7月18日)。

企業経営において複数会社の役員を重任するケースもありますが、健全な業務活動を遂行させることを目的として、取締役会又は株主総会の承認手続が要求されている場面も多いことにも十分な注意が必要です。

取締役の競業避止義務
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